第2問 「社史」と「記念誌」の違いは何ですか




お答え : 「ダイヤモンド」と「宝石」の違いとお考えください。

 「社史」と「記念誌」は言葉の基本的概念が違うものです。「概念」というと難しいようですが、要は「社史」という言葉の意味と「記念誌」という言葉の意味が本来的には全然別物ということです。「自動車」と「入道雲」くらい違うと言ったらよいでしょうか。あるいは「お菓子」と「スキー」でしょうか。それくらい、その言葉の作られた意味と目的が違うのです。ですから一般的に言うと「違いは何か」と言われても困るのですが、このご質問を頂くことが多いのでここに取り上げ、ご質問の意味するものから考えてみることにしました。

 基本的概念に区別すべき違いがあっても実用的概念(イメージ)が重なりやすい言葉というものはあり、「ダイヤモンド」と「宝石」などがそうです。「社史と記念誌の違いは何か」というのは「ダイヤモンドと宝石の違いは何か」というのと似ています。基本的概念を説明した辞書では「ダイヤモンド」は「鉱物の一つで純粋なものは無色透明。硬度が極めて高いため工業用研磨材や切削工具などに利用され、輝きの美しさから磨かれて宝石ともされる」、「宝石」は「希少で美しい鉱物などの総称。装飾品などに用いられる」とそれぞれ独立した意味を持っているので、本来は「ダイヤモンド≠宝石」ですが、実用的概念としては「ダイヤモンド=宝石」あるいは「ダイヤモンド≒宝石」の場合があります。

 「社史」と「記念誌」もそのように別個の基本的概念のものですが、実用的概念では重なる部分があるため、ご質問のような疑問も出てくるのだと思います。では、そういう角度から考えてみましょう。

 「社史とは何ですか」の項で説明したように、「社史」の意味は無限定でなく限定的なものですが、「記念誌」は「記念に作られる書物」すべてに適用できる幅広い言葉です。何かの記念とは関係なく作られた社史は「記念誌」ではありませんが、それが何らかの記念のために作られたのであれば、全く同じものでも「記念誌」ということになります。

 もし、「創立○○周年記念」として社史が作られるなら、その場合、それは記念誌でもあるわけなので、「社史=記念誌」が成り立ちます。また、「記念誌」は社史である必要はないので、社史を全く意図しない記念誌「社史≠記念誌」も成り立ちます(関係方面からの祝辞や関係者の祝賀的寄稿、回顧的な記念座談会などだけでまとめるような場合)。創立○○周年を迎えて記念の本を作るという場合には、それが社史であってもなくても「記念誌」ではあるわけなのです。

 ご質問のような疑問が出るのは、おそらく、「○○周年を迎えるので記念の本を作りたい。こういう場合、記念の本としては○○年史として『社史』が作られることが多いようだ。しかし『記念誌』という言葉もあるので社史と記念誌とは少し違うもののようだ。違いは何だろう」ということかと思います。

 そういうことであれば、答は記念の本を作ろうとされるあなたの中にあると言うしかありません。「社史」と「記念誌」の基本的概念はこれまで述べたとおりです。それをもとに、「社史=記念誌」を選ぶか「社史≠記念誌」を選ぶか、あるいは「社史≒記念誌」を選ぶかはあなたが決めることです。

 現実の傾向としては最も多い「社史≒記念誌」を作る場合のヒントを少し申し上げておきますと、結論としては「社史+α」の「α」を考えることになります。例としては会社代表者の挨拶、祝辞、OB・OGを含む内外からの寄稿、記念対談あるいは記念座談会の掲載などがよく行われるもので、外部の読者を意識する場合には会社の業務や専門用語の解説を掲載するなど、会社独自の工夫もさまざまに考えられます。「+α」の「α」は「記念企画」ということです。

 この場合、「社史+α」とは言っても、現実にはさらに考えるべき「選択」問題が出てきます。記念誌であっても「社史」を主眼とすることに徹する道を選ぶか、あるいは「社史」の要素を薄めて一般的な「記念誌」としての盛り上がりを優先する方針を選ぶかという問題です。つまりどちらのために「α=記念企画」を設定するかということです。それは例えば「OB寄稿」「記念座談会」「会社トップの記念対談」などのテーマ設定や誌面編集と密接に関連してきます。

 このように「社史≒記念誌」は、結局は必ず「社史>記念誌」か「社史<記念誌」かを迫られることになるので、できるだけ早い機会にこれを決定して隅々まで統一的に制作することが、作品の最終的な完成度を高めるカギになります。

《文責:社史ライター・竹林哲己(株式会社牧歌舎 代表)》



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